1999-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『生きる』

しかし、種牡馬として失敗してしまったメジロデュレンが血統図に名を残すことは、望み薄である。繁殖入りした娘が大物を出す可能性も、娘たちの総数を考えると限りなく小さい。長距離Glを2つも勝った彼の名は、このままファンたちの間から忘れ去られてしまう…

『第三の馬生』

種牡馬を引退したメジロデュレンは、乗馬として新たなるスタートを切ることとなった。気性の荒さから乗馬として穏やかにやっていけるのかどうかが心配されていたメジロデュレンだが、静岡県のつま恋乗馬クラブで、無事に乗馬としての馬生を送っているようで…

『賢弟愚兄?』

種牡馬となったメジロデュレンは、引退して1年間はメジロ牧場でゆっくりと静養し、種牡馬としての体作りに専念した。メジロデュレンが種付けを開始したのは、1990年春からのことだった。・・・当時はステイヤー種牡馬に対する評価がまだ高かった最後の時代だ…

『突然の幕切れ』

6歳になったメジロデュレンは、Glを2勝しながらもなかなか認めてもらえない自らの実力を証明するために、Gl2勝馬としては過酷ともいえるローテーションで7戦したものの、ついに未勝利に終わった。ステイヤーのメジロデュレンにとって、最大のチャンスは天皇…

『宴のあと』

大部分のファンたちの絶叫と悲鳴をよそに、逃げたレジェンドテイオーをゴール前で捕らえたのは、外から突っ込んできたメジロデュレンだった。同じ青い帽子の4歳馬・ユーワジェームスも、内を突いて追いすがってくる。こちらも菊花賞3着の実績はあったものの…

『狂想曲』

レースは当時随一の逃げ馬レジェンドテイオーが逃げる展開となった。メジロデュレンは、中団にいた大本命サクラスターオーの直後につけた。その位置でレースの流れに潜んだメジロデュレンは、中山の勝負どころとされる、2周目の第3コーナー過ぎで仕掛け時を…

『幕は喜劇から上がり』

続く有馬記念では、もはやメジロデュレンは穴馬ですらない、「その他大勢」の扱いに過ぎなかった。16頭だての10番人気というのは、前年の菊花賞馬に対してはあまりに冷たい評価であり、せいぜい馬場掃除というところである。 メジロデュレンに失望していたの…

『勝てば官軍、負ければ・・・』

菊花賞馬となったメジロデュレンは、その後早々に有馬記念(Gl)を回避し、翌年の日経新春杯(Gll)へと向かうことになった。菊花賞馬でありながら有馬記念に進まなかったのは、三冠牝馬のメジロラモーヌが出走予定だったためといわれている。「初めての牝馬クラ…

『メジロ最良の年』

菊花賞は2周目の坂下りを終え、後続馬はいっせいに追い始めた。第4コーナーを回って直線に入る時点で3番手という好位置につけていたメジロデュレンは、手応えも絶好だった。後方の有力馬たちが展開のアヤに苦しむ中で、メジロデュレンが敵と見定めていたのは…

『淀に棲む魔物』

メジロデュレンは、この日単勝1130円の6番人気に収まった。文字どおりの絶対的本命が不在の中で、この評価は「単穴」というところだろう。確かにメジロデュレンはこの日が重賞初挑戦であり、実績という点では他の有力馬たちに比べて見劣りすることは否めない…

『悲願』

この年の牡馬クラシック戦線は、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ミホシンザンと続いた名馬の時代が一息、といった感じで、近年にない混戦模様が続いていた。皐月賞、日本ダービーという春のクラシックを独占したのは、日本最大の生産牧場である社台フ…

『大器晩成』

メジロデュレンは、3歳になると栗東の池江泰郎厩舎へと入厩した。池江師は、現役時代のメジロオーロラも管理しており、さらに後には弟のメジロマックイーンをも管理することになる、彼の一族とは縁の深い調教師だった。 「メジロ軍団」の馬は、晩成馬が多い…

『受け継いだもの』

仔分けの繁殖牝馬の配合については馬主と牧場の個別の協議によって異なるようだが、メジロ牧場と吉田牧場の間では、最終的にはメジロ牧場が決めるものとされていた。繁殖に上がったばかりのメジロオーロラの初年度の交配相手として選ばれたのは、メジロ牧場…

『情熱が人を動かす』

メジロオーロラが吉田牧場にやってくることになったのは、吉田堅(かたし)牧場の先代・吉田隆氏の情熱のたまものだった。 吉田牧場がメジロ牧場の仔分けを始めたのは、1968年ころだった。すると、彼の牧場の仔分け馬からはメジロファントム、メジロハイネ、…

『名牝アサマユリ系』

メジロデュレンは、その冠名が示すとおり「メジロ軍団」の馬ではあるけれども、その生まれはメジロ牧場ではない。メジロデュレンは、浦河の吉田堅牧場で生まれた。吉田堅牧場は、当時の繁殖牝馬10頭のすべてがメジロ牧場の仔分けであり、メジロデュレンもそ…

『黄金兄弟』

日本の馬産界には「一腹一頭」という格言がある。それは、どんな期待の繁殖牝馬であったとしても、その生涯で本当に走る産駒は1頭送り出せれば十分成功といえるのだから、それ以上を求めてはいけない、ということを意味している。 種牡馬の場合だと、近年の…

■第010話―黄金兄弟、運命の岐路「メジロデュレン列伝」

1983年5月1日生。牡。鹿毛。吉田堅(浦河)産。 父フィディオン、母メジロオーロラ(母父リマンド)。池江泰郎厩舎(栗東)。 通算成績は、21戦6勝(旧3-6歳時)。主な勝ち鞍は、有馬記念(Gl)、菊花賞(Gl)。 ―メジロデュレンは悲しそうな嘶きを上げて、…

『雪、降りやまず』

しかし、女性ファンではなく繁殖牝馬がフレッシュボイスのもとに殺到する日は、ついに来なかった。フレッシュボイスの種付けは増えることなく、彼の種牡馬としての成績は目を覆うばかりで、初年度の産駒がデビューした1993年の成績は、なんと898位だった。当…

『天はなぜわかっては下さらぬ』

種牡馬生活に入ることになったフレッシュボイスは、自らは3歳時から活躍する仕上がりの早さと、古馬になってから息長く走り続ける成長力をあわせ持っていた。彼の本質はマイラーだったと思われるが、菊花賞(Gl)で6着、有馬記念(Gl)でも5着、6着に入った経験…

『夢よ、もう一度』

安田記念でフレッシュボイスの後塵を拝したニッポーテイオーは、次走の宝塚記念(Gl)でフレッシュボイスに先着したものの、スズパレードの2着に破れたため、Gl3連続2着という珍記録を作る羽目になってしまった。・・・だが、ニッポーテイオーの雌伏の時は、こ…

『戦慄の脚』

フレッシュボイスは、直線入口地点では、まだ後ろから何番目、という位置にいた。いくら直線が長い東京競馬場でも、19頭だての多頭数でこの位置、しかも馬場状態が重馬場というのでは、普通の馬ではもはや勝ち目はない。だが、フレッシュボイスは違った。持…

『悪コンディションの下で』

そんな後方への嘆きをよそに、その嘆きをはるかに超える大きな期待を背負ったニッポーテイオーは、快調にレースを引っ張っていった。重馬場だろうが何だろうが、真の実力馬には関係ない。横綱相撲で押し切ってみせる。彼の競馬は、そういわんばかりの自信に…

『深謀遠慮』

悪コンディションの中でゲートが開いた第37回農林水産省賞典安田記念の先手を取ったのは、大方の予想どおりニッポーテイオーだった。ニッポーテイオーは、もともと卓越したスピードで先行し、そのまま最後まで押し切ってしまうという競馬を得意としていた。…

『雨よ降れ降れ』

しかし、フレッシュボイス陣営にはニッポーテイオー、そしてレースに勝つための勝算があった。安田記念は直線が長い府中で行われるため、先行タイプのニッポーテイオーよりも、追い込みタイプのフレッシュボイスに有利である。そして、レース当日の府中には…

『マイルの帝王』

この年の安田記念(Gl)では、6歳以上の有力馬がおらず、せいぜい7歳馬から皇帝世代の生き残り・スズパレードが、中山記念(Gll)制覇の勢いを駆って悲願のGl制覇を目指して出走してきたのが目立つ程度だった。そんな出走馬の中で特に下馬評が高かったのは、フレ…

『器用貧乏』

ダービーを回避した後、放牧に出されたフレッシュボイスは、夏を休養にあてて秋には復帰した。フレッシュボイスの秋の戦績は、神戸新聞杯(Gll)4着、菊花賞(Gl)6着、そして有馬記念(Gl)5着というものだった。これらの成績は、実力がなければ残せない数字では…

『予感なきクラシックロード』

1986年牡馬クラシックロードは、絶対的な本命が不在の混戦模様が噂されていた。これは、当時の牡馬クラシック戦線の流れとはうって変わったものだった。 当時の牡馬クラシック戦線を振り返ると、1983年のミスターシービーを手始めに、84年のシンボリルドルフ…

『雪はやんだ・・・』

しかし、そんな不安を振り払うかのように、フレッシュボイスは圧勝した。スタートから立ち後れ気味になって最後方からの競馬となったフレッシュボイスだったが、向こう正面でまだ一番後ろにいたにもかかわらず、第3コーナーを過ぎると、みるみる進出を開始し…

『始まりの季節』

3歳時は勝っても勝っても評価が上がらなかったフレッシュボイスだったが、さすがにこれだけ好走を続けると、周囲の視線も変わってきた。4歳初戦で初めて重賞に挑むことになったフレッシュボイスは、そのシンザン記念(Glll)で2番人気に支持された。「早く追い…

『月見草のように』

3歳になって境直行厩舎へと入厩したフレッシュボイスは、やがて福島へと連れていかれ、芝1000mの新馬戦でデビューすることになった。父の実績からすれば、平坦コースの3歳戦、それも短距離というのは、格好の稼ぎ時といえた。10月というデビューも、有力馬が…