『名牝アサマユリ系』

 メジロデュレンは、その冠名が示すとおり「メジロ軍団」の馬ではあるけれども、その生まれはメジロ牧場ではない。メジロデュレンは、浦河の吉田堅牧場で生まれた。吉田堅牧場は、当時の繁殖牝馬10頭のすべてがメジロ牧場の仔分けであり、メジロデュレンもそんなメジロ牧場の仔分け馬メジロオーロラの子として生まれている。ちなみに、「仔分け」とは、馬主が繁殖牝馬を自らの所有馬として牧場に預け、産まれた子供の所有権は馬主が得ることをあらかじめ約束しておく方法である。

 メジロデュレンの母メジロオーロラは、メジロ牧場の基礎牝系のひとつであるアサマユリ系に属している。アサマユリは、自らの現役時代こそ平地で21戦2勝、障害で4戦未勝利とパッとしない成績に終わったものの、繁殖に上がってからは2頭の重賞馬を出し、さらに毎年のように産駒をターフへと送り出したところ、その血は娘たちを通じてさらに拡がり、メジロ牧場の生産馬たちの中に深く根付いている。

 アサマユリの初子メジロアイリスは、平地、障害でそれぞれ3勝ずつを挙げ、そのメジロアイリスにリマンドが交配された。そして生まれたのがメジロオーロラであり、彼女は後記の事情によって吉田堅牧場へ仔分けに出されていた。吉田堅牧場は、もともとメジロ牧場と深い付き合いがあり、メジロデュレンメジロマックイーン以外にも、天皇賞有馬記念で続けてハナ差の2着に入ったり、天皇賞6回、有馬記念5年連続出走という怪記録を作ったりして「個性派」として人気があったメジロファントム牝馬ながらにセントライト記念で菊を目指す牡馬たちを完封したメジロハイネなどを輩出している。

 このように、メジロオーロラから生まれる子馬が将来メジロの勝負服で走ることは、出生以前の段階で既に決まっていた。