2000-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『守るべきもの』

近年、日本に古くからいる牝系からの活躍馬が目立っている。天皇賞春秋連覇をはじめ、日本ダービー(Gl)、ジャパンC(国際Gl)も制したスペシャルウィークや、桜花賞馬キョウエイマーチらは、日本の土着牝系の出身である。古くから日本にいるということは、その…

『滅びゆく名血』

しかし、種牡馬としてのモンテファストはあまり人気を集めることができなかった。ステイヤー色が濃すぎるモンテファストの血統は、スピード化という時代の流れの中で敬遠されるようになっていたのである。 かつて競馬の中心だった英国競馬は、緩やかながら確…

『燃え尽きたように』

こうして天皇賞兄弟制覇の偉業を達成したモンテファストだったが、7歳という年齢からして、現役生活はそう長く残ってはいなかった。それに加えて、ただでさえもともと強くなかった脚部で500kgを超える巨体を支えてきた彼の脚だが、当時の彼の馬体重は550kg前…

『中止になった京都見物』

モンテファストのオーナーである毛利氏は、この日、妻を連れて京都へ応援にやって来ていた。もっとも、妻には競馬に興味がなかったため、レースの時はホテルに残して1人で競馬場に行き、レース後は2人で京都見物に出かける約束をしていた。 ところが、毛利氏…

『兄に続け』

モンテファストの持ち味は、ややジリ脚気味ではあったものの、いい脚を長く使えるところにあった。直線に入ったモンテファストは、前にいた馬たちを次々とかわし、ついには先頭に立った。それでも、モンテファストの勢いは留まるところを知らなかった。 その…

『道は開いた』

吉永騎手は、常に常勝を望まれる存在だったモンテプリンスと違い、今度は気楽に手綱をとることができたという。馬の力を引き出せば好勝負になると信じていたのはモンテプリンスもモンテファストも同じだった吉永騎手だったが、ただモンテプリンスの時は、周…

『本命馬の苦悩』

第89回天皇賞のゲートが開くと、圧倒的1番人気を背負ったホリスキーがスタート直後すぐに手綱を抑え、後方から3番手辺りにつけた。後方からのマクりを得意とするホリスキーにとっては、この位置はそれほど予想外のものではない。 ホリスキーの菅原騎手の胸中…

『理由』

下馬評もさることながら、レース前の京都競馬場には「ホリスキーで仕方ない」という雰囲気が漂っていた。前年の天皇賞・春では、直線でいったん差したはずのアンバーシャダイの驚異的な粘りに遭って、もう一度差し返されて半馬身差に無念の涙を飲んだホリス…

『主役と脇役』

もっとも、兄のモンテプリンスと比べると、この時点での弟の成績がまだインパクトに欠けるものだったことは否定できない。7歳緒戦の日経賞(Gll)は4着にとどまり、本番の天皇賞・春(Gl)でも、モンテファストが予想の中心になることはなかった。 1984年の天皇…

『愚弟の反撃』

そんな話はどうでもいいとして、モンテファストはその後いよいよ本格化していった。あるいはブロケードの引退を知って元気が出たのかも知れない。彼を蹴飛ばしたワルい女はもういない。モンテファストはついに幼き日のトラウマを克服したのである。 函館記念…

『恐怖の再会』

函館記念でのモンテファストは、重賞初挑戦ということもあって、53kgとハンデに恵まれた。「良血開化」と話題になった彼は、2番人気に支持された。後方待機策を採ったモンテファストは、向こう正面あたりからマクり気味に進出を開始し、第4コーナーで2番手に…

『汚名を雪ぐため』

モンテファストがようやく2勝目を挙げたのは、5歳秋になってからだった。通算11戦目でようやく2勝目をあげたこのころには、誰もがモンテファストへの期待を忘れ、「こんなものなんだろう」と諦め、あるいは見捨てつつあった。 皮肉なことに、モンテファスト…

『愚弟と呼ばれ続けて』

しかし、モンテファストがブロケードに蹴飛ばされ、心に深い傷を負ったという事件は、一般にはあまり知られることもなかった。一般のファンにとって、モンテファストとはあくまで「モンテプリンスの全弟」「牧場時代の評価は兄より上」の馬であり、馬群を怖…

『トラウマ』

3歳になって兄と同じ美浦の名門・松山吉三郎厩舎に入厩したモンテファストは、「モンテプリンスの全弟」として周囲の熱い視線を集めた。兄はその春のクラシック戦線の本命として、日本ダービーでは1番人気に支持された。その日本ダービーこそオペックホース…

『最大の危機』

ところが、生まれて間もないモンテファストは、早くも大きな危機に直面した。生後1ヶ月にもならない幼いモンテファストは、ある日激しい疝痛に襲われた。診断の結果、彼は重度のヘルニアと診断された。病気の影響で彼の睾丸は腫れ上がり、やがて生命も危険な…

『偉大なる兄』

こうしてモンテオーカンは、杵臼斉藤牧場で繁殖生活をスタートさせた。当然のことながら、斉藤氏が彼女に寄せる期待は並々ならぬものがあった。 だが、せっかく生まれたモンテオーカンの初仔・・・パーソロンを父に持つ期待馬は、当歳時に事故で死んでしまっ…

『縁』

しかし、突然現れた面識もない23歳の若者にいきなり「馬を預けて下さい」といわれて「はい、そうですか」と答える調教師などいない。いわんや松山厩舎は美浦の名門であり、松山吉三郎師も大御所として知られた存在である。松山師は、斉藤氏の懇願に対しても…

『魅せられて』

モンテファストの父シーホークは、種牡馬として素晴らしい実績を残したステイヤー種牡馬であり、母モンテオーカンもまた、中央競馬で走って9勝を挙げた名牝である。 ただ、後世においてモンテオーカンに「名牝」という呼称を用いる場合、それは彼女の競走成…

『天皇賞兄弟制覇』

かつて、日本競馬に長距離レースを勝つことこそが無上の勲章となる時代があった。もともと英国競馬に倣ったレース体系をとり、2400mを「クラシックディスタンス」とする芝レースを中心に据えてきたわが国の中央競馬では、長距離レースこそが長い間競馬の醍醐…

■第024話―愚弟と呼ばれた天皇賞馬「モンテファスト列伝」

1978年5月31日生。牡。鹿毛。杵臼斉藤牧場(浦河)産。 父シーホーク、母モンテオーカン(母父ヒンドスタン)。松山吉三郎厩舎(美浦)。 通算成績は、27戦8勝(旧3-7歳時)。主な勝ち鞍は、天皇賞・春(Gl)、目黒記念(重賞)。 天皇賞兄弟制覇。 試練を、…