1999-01-17から1日間の記事一覧

『雪、降りやまず』

しかし、女性ファンではなく繁殖牝馬がフレッシュボイスのもとに殺到する日は、ついに来なかった。フレッシュボイスの種付けは増えることなく、彼の種牡馬としての成績は目を覆うばかりで、初年度の産駒がデビューした1993年の成績は、なんと898位だった。当…

『天はなぜわかっては下さらぬ』

種牡馬生活に入ることになったフレッシュボイスは、自らは3歳時から活躍する仕上がりの早さと、古馬になってから息長く走り続ける成長力をあわせ持っていた。彼の本質はマイラーだったと思われるが、菊花賞(Gl)で6着、有馬記念(Gl)でも5着、6着に入った経験…

『夢よ、もう一度』

安田記念でフレッシュボイスの後塵を拝したニッポーテイオーは、次走の宝塚記念(Gl)でフレッシュボイスに先着したものの、スズパレードの2着に破れたため、Gl3連続2着という珍記録を作る羽目になってしまった。・・・だが、ニッポーテイオーの雌伏の時は、こ…

『戦慄の脚』

フレッシュボイスは、直線入口地点では、まだ後ろから何番目、という位置にいた。いくら直線が長い東京競馬場でも、19頭だての多頭数でこの位置、しかも馬場状態が重馬場というのでは、普通の馬ではもはや勝ち目はない。だが、フレッシュボイスは違った。持…

『悪コンディションの下で』

そんな後方への嘆きをよそに、その嘆きをはるかに超える大きな期待を背負ったニッポーテイオーは、快調にレースを引っ張っていった。重馬場だろうが何だろうが、真の実力馬には関係ない。横綱相撲で押し切ってみせる。彼の競馬は、そういわんばかりの自信に…

『深謀遠慮』

悪コンディションの中でゲートが開いた第37回農林水産省賞典安田記念の先手を取ったのは、大方の予想どおりニッポーテイオーだった。ニッポーテイオーは、もともと卓越したスピードで先行し、そのまま最後まで押し切ってしまうという競馬を得意としていた。…

『雨よ降れ降れ』

しかし、フレッシュボイス陣営にはニッポーテイオー、そしてレースに勝つための勝算があった。安田記念は直線が長い府中で行われるため、先行タイプのニッポーテイオーよりも、追い込みタイプのフレッシュボイスに有利である。そして、レース当日の府中には…

『マイルの帝王』

この年の安田記念(Gl)では、6歳以上の有力馬がおらず、せいぜい7歳馬から皇帝世代の生き残り・スズパレードが、中山記念(Gll)制覇の勢いを駆って悲願のGl制覇を目指して出走してきたのが目立つ程度だった。そんな出走馬の中で特に下馬評が高かったのは、フレ…

『器用貧乏』

ダービーを回避した後、放牧に出されたフレッシュボイスは、夏を休養にあてて秋には復帰した。フレッシュボイスの秋の戦績は、神戸新聞杯(Gll)4着、菊花賞(Gl)6着、そして有馬記念(Gl)5着というものだった。これらの成績は、実力がなければ残せない数字では…

『予感なきクラシックロード』

1986年牡馬クラシックロードは、絶対的な本命が不在の混戦模様が噂されていた。これは、当時の牡馬クラシック戦線の流れとはうって変わったものだった。 当時の牡馬クラシック戦線を振り返ると、1983年のミスターシービーを手始めに、84年のシンボリルドルフ…

『雪はやんだ・・・』

しかし、そんな不安を振り払うかのように、フレッシュボイスは圧勝した。スタートから立ち後れ気味になって最後方からの競馬となったフレッシュボイスだったが、向こう正面でまだ一番後ろにいたにもかかわらず、第3コーナーを過ぎると、みるみる進出を開始し…

『始まりの季節』

3歳時は勝っても勝っても評価が上がらなかったフレッシュボイスだったが、さすがにこれだけ好走を続けると、周囲の視線も変わってきた。4歳初戦で初めて重賞に挑むことになったフレッシュボイスは、そのシンザン記念(Glll)で2番人気に支持された。「早く追い…

『月見草のように』

3歳になって境直行厩舎へと入厩したフレッシュボイスは、やがて福島へと連れていかれ、芝1000mの新馬戦でデビューすることになった。父の実績からすれば、平坦コースの3歳戦、それも短距離というのは、格好の稼ぎ時といえた。10月というデビューも、有力馬が…

『血の神秘』

フィリップオブスペインは、英国で9戦1勝という戦績を残している。生涯唯一の勝ち鞍が3歳限定の5ハロン戦であるニューS(英Glll)という重賞だというのは、わが国の競馬とはまったく異なる本場のレース体系の奥深さを物語る。また、他にも3歳限定の6ハロン戦ミ…

『名門牧場の危機』

フレッシュボイスは、1983年5月9日、当時静内にあった小笠原牧場で生をうけた。当時、小笠原牧場といえば、静内近辺では古い歴史を持つ名門牧場のひとつとして知られており、かつては1952年の皐月賞、ダービーでともに2着したカミサカエを出したこともあった…

『常識を超えた馬』

競馬界には「常識」と呼ばれるものが無数に存在している。馬の血統、個性、レースの展開、騎手の手腕、性格、人間関係など、様々な局面で気まぐれに顔を覗かせる「常識」は、馬券の予想にあたっても、私たちの予想に大きな影響を与える。時にはとんでもない…

■第009話―雪、降りやまず「フレッシュボイス列伝」

1883年5月9日生。牡。鹿毛。小笠原牧場(静内)産。 父フィリップオブスペイン、母シャトーバード(母父ダイハード)。境直行厩舎(栗東)。 通算成績は、26戦7勝(3-7歳時)。主な勝ち鞍は、安田記念(Gl)、産経大阪杯(Gll)、日経新春杯(Gll)、毎日杯…