2000-02-17から1日間の記事一覧

『戦いに生きて』

ゴールドシチーの骨折の原因は、骨折の瞬間を目撃した人がいないため、推測に頼るよりほかにない。他の馬に蹴られた、不注意で柵にぶつかった、その他いろいろな理由が考えられるものの、上腕部という不思議な骨折の個所、そして発見されたときの状況からは…

『南国に果つ』

ゴールドシチーの乗馬生活の終わりは、突然やってきた。ゴールドシチーが宮崎競馬場にやってきて約半年が過ぎた平成2年5月1日、悲劇は起こった。 その日のゴールドシチーは、いつもと同じように他の馬たちと一緒に放牧に出されていた。メーデーで休みを取っ…

『悲しき抵抗』

乗馬としての調教を受けるために宮崎競馬場にやって来るサラブレッドの多くは、競走馬を引退した馬たちだった。彼らも、最初は競走馬時代の習性が抜けないのか、他の馬と並んで歩くことを拒んで暴れたり、突然走り出したりすることは珍しくないという。だが…

『嗚呼、Gl馬』

ゴールドシチーの引退後については、資料も比較的多く、詳細な「その後」を伝えることができる。 こうして競走生活を引退することになったゴールドシチーだったが、通算成績20戦3勝、Glとはいっても、いわゆる八大競走等と比べて格式は低いとされる阪神3歳S…

『早すぎた限界』

ゴールドシチーは、菊花賞の後も鳴尾記念(Gll)へと出走した。ここでは1番人気に支持されたゴールドシチーだったが、菊花賞の疲れが残っていたのか、それとも56.5キロのトップハンデが響いたのか、人気を裏切って6着に沈んでしまった。ファン投票では、有馬記…

『終わる夢』

鞍上が転々とした末、河内騎手とともに臨むことになった菊花賞の当日、ゴールドシチーは、ダービー馬メリーナイスに次ぐ2番人気に支持された。メリーナイスは秋初戦のセントライト記念(Gll)も勝っており、1番人気は当然としても、ダービー4着のゴールドシチ…

『鞍上転々』

春のクラシックで良績を残した4歳馬は、夏休みを経て菊花賞(Gl)を目指すのが普通である。ゴールドシチーもその例に漏れず、神戸新聞杯(Gll)から菊花賞へ向けて始動することになった。ちなみにこのときゴールドシチーの鞍上は、前述の事情で本田騎手から猿橋…

『謎の後退』

ところが、ゴールドシチーは一生に一度の晴れ舞台で、謎の走りをしてしまった。ゴールドシチーはスタートこそ心配された出遅れもなく、うまく中団につけることに成功した。しばらくすると無理なく、しかし確実に、前との差を詰めていく気配さえ見せていた。…

『夢は府中へ』

体調不十分な中で2着に頑張ったゴールドシチーの皐月賞での走りは、清水師らにダービーを意識させるものだった。本当は未経験の東京競馬場を経験させるため、ゴールドシチーをNHK杯(Gll)で使いたかった清水師だったが、不完全な体調で爆走した馬の疲労を考え…

『禍転じて・・・』

しかし、「禍福はあざなえる縄の如し」という格言もあるとおり、不運と幸運との差は、事態に直面する当事者が思うより、はるかに小さなものに過ぎない。この日のゴールドシチーは、まさに禍が福に転じた好例となった。 スタート直後のゴールドシチーは、後ろ…

『波乱の幕開け』

閑話休題。こうして西の3歳王者に輝いたゴールドシチーは、最優秀3歳牡馬にも、朝日杯3歳S(Gl)馬のメリーナイスとの同時受賞ながら、見事に選出された。 もっとも、この年は有力馬のデビューが遅れるケースが多く、暮れに間に合わず、あるいはGlをあえてスキ…

『じ〜わんって、何さ』

阪神3歳Sの時、ゴールドシチーの故郷である田中牧場では、生産者の田中夫妻の間で、深遠なる会話が交わされていた。レースの時、田中夫人はちょうど買い物に出かけていたため、田中氏は一人テレビで、自分の生産馬の快挙を見つめていた。優勝が決まってすっ…

『西の3歳王者』

こんな調子だから、本田騎手としても自分の構想よりは早めに先頭に立つ展開を余儀なくされた。それでも手ごたえはとてもよく、いったん先頭に立った時には、本田騎手もこのまま抜け出せる、と勝利を半ば確信したという。 ところが、ここでゴールドシチーは本…

『関西お目見え』

北海道で5戦を走ったゴールドシチーは、ようやく栗東へ帰ってくると、その後しばらくレースには出走せず、慎重に調整することになった。コスモス賞から約3ヶ月、ゴールドシチーの復帰戦となったのは、阪神3歳S(Gl)だった。関西馬のくせに、関西初出走はGlに…

『目立たぬままに』

当初、デビューを待っていた多くの若駒の中で、ゴールドシチーがたちまち頭角を現したわけではなかった。特別な良血でもなければ調教で抜群の時計を叩き出すわけでもないゴールドシチーは、夏にデビューした後も、しばらくの間は平凡な3歳馬の1頭としてしか…

『強さと脆さと』

ただ、「ヘミングウェイ」は血統こそ平凡だったものの、その四白流星尾花栗毛という派手な外見は平凡ではなかった。彼の毛色の派手さ、そして美しさは際立っており、馬をほとんど知らない人でも、彼だけは遠くから見ただけですぐに区別できた。田中氏は、「…

『馬に貴賎なし、然れども血統に貴賎あり』

ゴールドシチーが生まれたのは、門別の田中牧場である。当時の田中牧場は、田中茂邦氏夫妻が2人で経営していた小さな牧場であり、過去に特筆すべき実績馬を出したこともなかった。 ゴールドシチーの母であるイタリアンシチーは、大衆向け一口馬主クラブの走…

『挽歌』

1986年の勝ち馬ゴールドシチーは、今回取り上げる6頭の中では、比較的有名な部類に属する。「四白流星尾花栗毛」―あらゆる馬の毛色の中で最も美しいといわれる毛色を持ったこの馬は、年間約8000頭が生産される日本のサラブレッドの中でも稀に見る美しさを持…

□第025話 前編3―「ゴールドシチーの章」

1984年4月16日生。1990年5月1日死亡。牡。栗毛。田中牧場(門別)産。 父ヴァイスリーガル、母イタリアンシチー(母父テスコボーイ)。清水出美厩舎(栗東)。 通算成績は、20戦3勝(3-6歳時)。主な勝ち鞍は、阪神3歳S(Gl)、コスモス賞(OP)。 ―その時、…