『西の3歳王者』

 こんな調子だから、本田騎手としても自分の構想よりは早めに先頭に立つ展開を余儀なくされた。それでも手ごたえはとてもよく、いったん先頭に立った時には、本田騎手もこのまま抜け出せる、と勝利を半ば確信したという。

 ところが、ここでゴールドシチーは本田騎手が予想もしないことを始めた。突然ソラを使ったのである。ソラを使うとは、レース中によそ見をすることだが、全力を尽くして走っている時なら、ソラを使う余力などあるはずはない。負けず嫌いでは人後(馬後?)に落ちないゴールドシチーだったが、いったん先頭に立つと、それで満足してしまったのか、勝手に気を抜いてしまったのである。当然後続は、この機を逃すまじ、とばかりに一気に差を詰めてくる。

 幸い、いざ抜かれるかといった段階になって、ゴールドシチーの闘志に再び火がついた。この日のゴールドシチーのいれ込みはいい方向に作用し、むき出しの闘志につながった。再び走る気になったゴールドシチーは、抜かせまい、と二の脚を使い、追い上げてきたサンキンハヤテ、ファンドリスキーと団子状態になったままゴールへと駆け込んだ。・・・そして、写真判定の結果、サンキンハヤテをアタマ差抑えたゴールドシチーは、見事に西の3歳王者に輝いた。開業1年目の清水師、24歳の本田騎手ともGl初制覇だった。勝ち方自体はかなり課題の残るものだったが、彼らもこの日だけは、勝利の美酒にすべてを忘れたのである。