『夢は府中へ』

 体調不十分な中で2着に頑張ったゴールドシチー皐月賞での走りは、清水師らにダービーを意識させるものだった。本当は未経験の東京競馬場を経験させるため、ゴールドシチーNHK杯(Gll)で使いたかった清水師だったが、不完全な体調で爆走した馬の疲労を考えて、皐月賞の後はダービー(Gl)に直行させることに決めた。

 そのかいがあったのか、皐月賞の後、ゴールドシチーの体調はただ回復するにとどまらず、みるみる上向いていった。ダービー当日、ゴールドシチーは今度こそ、抜群の仕上がりで大一番に臨むことになったのである。最悪の状況だった皐月賞では2着に突っ込み、さらにその皐月賞でただ1頭彼より前にいたサクラスターオーは、脚部不安を発症して戦列を離脱している。これで色気をもつなというほうが無理な話である。

 当日のパドックには、皐月賞で見せた、走りたくない様子を隠さない気弱なゴールドシチーの姿はなかった。代わってそこにいたのは、周囲をあきれさせるほどのいれ込みで、抑えきれぬ闘志を前面に押し出した、いつものような「不良少年」ゴールドシチーだった。本馬場入場の時、早くもレースが始まったかのように駆けていくゴールドシチーは、いかにも大仕事をやってくれそうな雰囲気を漂わせていた。