1998-09-20から1日間の記事一覧

『今ひとたびの―』

ハクタイセイの1997年度の種付けは、ついにゼロとなった。種牡馬としての将来は、暗いといわざるを得ない。彼が今している仕事は、人気輸入種牡馬のアテ馬だという。 ハクタイセイの仔は、地方ではぽつぽつと勝っているものの、中央での勝ち上がり馬はいない…

『流れ種牡馬』

ハクタイセイの種牡馬生活は、辛いものとなってしまった。ハイセイコーの血は、革新と淘汰が続く馬産界では、既に時代遅れのものとなりつつあったのである。 静内で供用された初年度(1992年)は、26頭の繁殖牝馬に種付けして18頭の産駒を得るにとどまった。…

『さらば戦いの日々』

ハクタイセイは、その後、調教中に屈腱炎に見舞われて長期休養を強いられることになった。その症状は重く、戦列離脱の期間は長引いた。それでも布施師ら関係者の苦労によって、ハクタイセイは翌年の安田記念(Gl)にようやく登録するところまでたどりつき、…

『遥かなる試練』

ハクタイセイにとって、この日のダービーは、不運な展開だった。距離適性で劣ることは分かっていたのに、直線でアイネスフウジンをとらえに行ける馬は、自分しかいなかった。スタミナが切れる最後の直線で、本来勝負を賭けるべき位置よりも早く勝負を賭けな…

『血の宿命(さだめ)』

結果的に、武騎手の判断は裏目に出た。ハクタイセイは、いったんアイネスフウジンとの差を詰めに行ったものの、アイネスフウジンはなんとそこからもう一度加速したのである。究極のスタミナ勝負に持ち込んだアイネスフウジンの前に、ハクタイセイは完全に翻…

『それぞれの東京優駿』

日本ダービー当日、ゲートが開いてすぐに飛び出したのは、大方の予想通りアイネスフウジンだった。鞍上のベテラン中野栄治騎手は、それまで長らくスランプに陥っており、騎乗依頼も減って引退の危機にあった。そんな危機にあって、中野騎手に与えられたチャ…

『三強再戦』

皐月賞父子制覇の偉業を果たしたハクタイセイに次に期待されたのは、父の果たしえなかったダービー制覇だった。ハクタイセイの父ハイセイコーは、皐月賞を勝ったものの、ダービーでは伏兵タケホープの後塵を拝して3着に敗れ去っている。父の夢を継いだ子が、…

『夢再び』

ハクタイセイ、メジロライアン、アイネスフウジンの「三強対決」が注目された皐月賞は、1990年(平成2年)4月15日、中山競馬場で戦いの火蓋が切って落とされた。この日、レース前に誰もが逃げると予想していたのは1番人気のアイネスフウジンだったが、予想と…

『風雲急』

その後のハクタイセイは、皐月賞(Gl)を目指す有力馬が普通なら出走する弥生賞(Gll)、スプリングS(Gll)といった皐月賞トライアルを無視して、本番へと直行することになった。もともと5勝を挙げているハクタイセイは本賞金を十分すぎるほど稼いでいるから…

『仁川発希望行き』

そんな情勢の中で、ハクタイセイはようやく初めての重賞に挑戦することになった。ハクタイセイにとっての初めての重賞となったきさらぎ賞(Glll)は、もともとはクラシックへの登竜門といわれる伝統のレースであり、近年では復権の兆しを見せ、1998年のダービ…

『関東の新星』

もっとも、4連勝したからといって、それでただちにハクタイセイの評価がうなぎのぼりになったわけではなかった。勝ち続けたとはいっても、それは強い相手との厳しい競馬を避けたローテーションでのことである。クラシックを勝ち抜くためには、彼がまだ経験し…

『塞翁が馬』

ところが、その後のハクタイセイは、なかなか勝てなかった。周囲の期待を裏切って4着、6着という着順が続いたのである。未勝利戦の場合、強い馬は次々勝ち上がっていくから、出走馬は時とともに弱くなっていくはずである。それなのにハクタイセイは、走れば…

『競馬場へ』

セリの結果は残念だったが、売れ残ったことに文句を言っても仕方がない。土田氏は、ハクタイセイの競争相手に近所の牧場から牡馬を1頭借りてきて、ハクタイセイと一緒に運動させることで、なんとか急場をしのいだ。ちなみに、このとき土田農場に牡馬を貸した…

『裏切られた思い』

ところが、実際に生まれたハクタイセイを見た時、土田氏は自分の期待が見事に裏切られたという失望を感じずにはいられなかった。生まれたばかりのハクタイセイはひ弱で、牝馬のように線が細い馬だったからである。 また、ハクタイセイはハイセイコーとは違っ…

『星に願いを』

ハクタイセイは、当時繁殖牝馬11頭という家族経営の生産農家だった三石の土田農場で、父ハイセイコーと母ダンサーライトとの間に生まれた。 父のハイセイコーは、前述のように日本競馬の歴史の中でも特異な地位を占める名馬である。彼はデビュー当初、南関東…

『ハイセイコーの子』

日本競馬の歴史の中で、競馬ファンに「最強馬」として称えられ、あるいは「名馬」として尊敬を集めたサラブレッドたちは少なくない。しかし、競馬ファンのみならず、一般大衆にいたるまでの誰もがその名を知っており、彼らを競馬ファンへと引きずり込むほど…

■第003話―怪物二世の光と影「ハクタイセイ列伝」

1987年4月17日生。牡。芦毛。土田農場(三石)産。 父ハイセイコー、母ダンサーライト(母父ダンサーズイメージ)。布施正厩舎(栗東)。 通算成績:11戦6勝(3-4歳時)。主な勝ち鞍:皐月賞(Gl)、きさらぎ賞(Glll)、若駒S(OP)、シクラメンS(OP)。 ―…