『今ひとたびの―』

 ハクタイセイの1997年度の種付けは、ついにゼロとなった。種牡馬としての将来は、暗いといわざるを得ない。彼が今している仕事は、人気輸入種牡馬アテ馬だという。

 ハクタイセイの仔は、地方ではぽつぽつと勝っているものの、中央での勝ち上がり馬はいないという状況である。ハイセイコーの他の代表産駒であるカツラノハイセイコ天皇賞とダービーを制したほどの名馬で、産駒としても中央でオークス2着のユウミロク、地方でも強豪を輩出しているが、遠く馬産のメッカ北海道を離れた千葉で供用されており、1998年には日本軽種馬協会那須種馬場に移動し、事実上の種牡馬引退を迎えた。南関東二冠を制したキングハイセイコーも、スノーエンデバーが代表産駒という苦しい状況で、ハイセイコーの直系は、断絶の危機にあるといってよい。

 幸いハクタイセイは痩せても枯れても皐月賞馬であり、種牡馬を引退すれば、JRAに引き取られる資格がある。申請さえしてもらえれば、功労馬として遇される保障があるはずである。

 しかし、ハクタイセイの血、そしてハイセイコーの血が、このまま競馬界から消え去っていくのはあまりにも惜しい。ハイセイコーが母の父となるマイネルマックスが朝日杯を勝ったことからも分かるように、この血は配合さえはまれば、きっと走る血なのである。ハクタイセイにかかったはかない期待、父子3代皐月賞制覇の夢や、種牡馬入りできるような大物が現れてほしいという希望が現実のものとなることはもはやなさそうだが、せめてその血を少しでも多く牝系として伝えていくわけにはいかないのだろうか・・・。[完]

記:1998年9月20日 補訂:1999年2月10日 2訂:2000年6月22日 3訂:2001年8月9日 4訂:2003年2月16日
文:「ぺ天使」@MilkyHorse.com
初出:http://www.retsuden.com/