1998-09-28から1日間の記事一覧

『中央と地方の狭間で』

近年の傾向として、中央競馬と地方競馬の交流は著しく進むようになった。97年に導入された統一グレード制により、中央馬の地方遠征もいまや珍しいものではなくなった。さらに、地方馬が地方在籍のまま、中央の統一グレードレースはもちろんのこと、クラシッ…

『運命の暗転』

脚質もそれまでの追い込み一辺倒から脱却し、新たな距離適性を開拓したドクタースパート陣営は、翌年の天皇賞・春(Gl)に向けて意気あげる結果となった。・・・しかし、彼らが抱いた希望が実を結ぶことはなかった。ドクタースパートは、両前脚に屈腱炎を発生…

『予兆なき復活』

天皇賞・秋(Gl)でいいところなく12着に敗退したドクタースパートは、次走をステイヤーズS(Glll)に定めた。ステイヤーズSは中山の芝3600mで行われ、障害を除けば、中央競馬で最も長距離の重賞となっている。それまでのドクタースパートが走った最長距離が、4…

『先の見えぬ闇』

こうして皐月賞馬となったドクタースパートだが、その後の彼を待っていたのは、あまりに長いトンネルだった。 皐月賞に続く日本ダービー(Gl)では、波乱となった皐月賞の結果が例年のように直結するとはみてもらえず、1番人気が重賞未勝利のロングシンホニー…

『―おめでとう』

しかし、ゴール前で猛然と追い込んできたのは、的場騎手が恐れていたサクラホクトオーではなかった。前走の400万下(現500万下)を勝ち上がったばかりで、重賞初挑戦を皐月賞に持ってきたウィナーズサークルだった。過去に挙げた2勝はいずれもダートでのもので…

『迫り来る影』

スタート当初は中団からの競馬になったドクタースパートだったが、この日は徐々に前方へ進出を開始していった。この大切なレースで、最悪の馬場状態は、ドクタースパートに味方していた。サクラホクトオーをはじめとする他の馬たちは、馬場を苦にしてなかな…

『夢を背負って』

皐月賞(Gl)当日、ファンは3歳王者の実力を信じ、弥生賞で惨敗したサクラホクトオーを1番人気に支持した。ドクタースパートは3番人気となった。 だが、レース当日の中山競馬場は、弥生賞ほどではないにしても、馬場状態は最悪に近いものだった。弥生賞のよう…

『良血馬の蹉跌』

重賞を勝ったことで、中央でも通用する実力を示したドクタースパートは、翌年のクラシックに向けて、注目馬の1頭として位置づけられるようになった。 しかし、この時点では、1989年牡馬クラシック戦線の主役と見られる馬は、別にいた。この年の日本ダービー(…

『道営の星』

北の国からやって来たドクタースパートに対し、最初、中央競馬ファンの視線は懐疑的だった。低レベルな道営競馬からやって来たダート馬・・・そんなイメージは、それまでの道営競馬の状況に照らす限り、必ずしも不当な偏見とは言い切れない側面があったこと…

『託された思い』

ところで、有望な地方馬がマル地として中央に転入する場合、その馬を取り巻く人々の間に様々な葛藤が生じることは避けられない。地方競馬の馬主資格と中央競馬の馬主資格はまったく別物であるから、地方競馬の馬主が中央競馬の馬主資格を持っていない場合、…

『北の国から』

しかし、母と同じ成田春男厩舎へ入厩したドクタースパートは、兄とは違ってみるみる頭角を現し始めた。デビュー直後の2戦は3着、2着と惜しい競馬を繰り返したものの、その後は見事に3連勝を飾ったのである。ドクタースパートは、その勢いで道営競馬の3歳馬チ…

『運命の名前』

こうして奇跡的に繁殖牝馬となることができたドクターノーブルは、松岡氏のたっての要望により、2年続けてホスピタリティと交配されることになった。こうして生まれた2頭の全兄弟に、松岡氏はとっておきの名前をつけることにした。自分の職業である小児科医…

『奇跡の母』

ドクタースパートは、新冠・須崎光治氏の生産馬である。後にマル地の強豪として名を馳せるドクタースパートだが、生まれた時からそんなことが分かろうはずもない。しかし、ドクタースパートの血統は、彼のその後の運命を暗示するものだった。 ドクタースパー…

『伝説のマル地』

ドクタースパートの父ホスピタリティは、1979年に生まれた。彼と同世代で有名な馬には、黄金の逃げ馬ハギノカムイオー、菊花賞を驚異のレコードで制したホリスキー、ノーザンテーストの後継種牡馬として成功したアスワンらがいる。彼らがクラシック戦線で死…

『マル地の父子の物語』

中央競馬には、「マル地」と呼ばれる馬がいる。「マル地」とは、地方競馬からの転入馬のことであり、レースにおける馬柱では、常に特別なマークをつけられ、そうでない馬たちとは区別される存在である。 「マル地」・・・それは、中央競馬と地方競馬が別々に…

■第004話―伝説の許されざる時代に「ドクタースパート列伝」

1986年4月29日生。牡。鹿毛。須崎光治(新冠)産。 父ホスピタリティ、母ドクターノーブル(母父タケシバオー)。柄崎孝厩舎(美浦)。 通算成績:18戦7勝[JRA:12戦3勝/道営:6戦4勝](3-5歳時)。 主な勝ち鞍:皐月賞(Gl)、京成杯3歳S(Gll)、ステイヤ…