『関東の新星』

 もっとも、4連勝したからといって、それでただちにハクタイセイの評価がうなぎのぼりになったわけではなかった。勝ち続けたとはいっても、それは強い相手との厳しい競馬を避けたローテーションでのことである。クラシックを勝ち抜くためには、彼がまだ経験していない本当に厳しい競馬を制することが、必ず必要になる。そうすると、ハクタイセイの厳しい競馬への経験の薄さは、マイナス材料となる可能性も高い。

 さらに、ハクタイセイがこれから戦うべきこの年の4歳世代には、ハクタイセイがまだ見ぬ2頭の強豪がいた。疾風の逃げ馬アイネスフウジンと、雷光の末脚を持つメジロライアンである。

 ハクタイセイが関西で地道に勝ちを稼いでいたころ、東の3歳王者決定戦である朝日杯3歳S(Gl。現朝日杯フューティリティS)では、アイネスフウジンがあのマルゼンスキーに並ぶ1分34秒4というレコードタイ記録を叩き出し、圧勝していた。またメジロライアンはひいらぎ賞(400万円下)とジュニアC(OP)を鮮烈な差し切りで制し、大器の片鱗を明らかにしつつあった。当時の予想では、クラシック戦線はこの2頭の関東馬を中心に回っていくものとみられており、関西のハクタイセイにはあまり注目が集まっていなかった。