1999-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『―ただ、消え去るのみ』

オグリキャップは、今や説明不要の期待のアイドルホースにして超一流馬である。公営笠松競馬で12戦10勝の成績を残して中央入りしたオグリキャップは、中央競馬でも出るレース出るレースで連戦に次ぐ連勝を重ねた。競馬の華というべきクラシックレースには、…

『老兵は死なず―』

しかし、スズパレードは不死鳥の如くターフへ還ってきた。8歳いっぱい走った後で引退、というプランのもとで、復帰のために全力が尽くされた。スズパレードも、レースが近付くと、まるでそのことが分かっているかのように、飼い葉を食べるのを控えて自ら実戦…

『楽あれば苦あり』

しかし、宝塚記念を制して悲願のGl制覇を果たしたスズパレードを待っていたのは、またしても苦難の道だった。激走の代償は、3度目の脚部不安発症だったのである。 富田師は、後にスズパレードについて「骨折以外の脚部不安は、すべて経験した」と回想してい…

『大輪の華』

すると、蛯沢騎手の切実な思いが通じたのか、その後の展開は、スズパレードにとって非常に都合のいいものとなった。前を行くニシノライデンをかわしにかかったニッポーテイオーは、ニシノライデンのすぐ外につけたのである。蛯沢騎手は、とっさにスズパレー…

『望み』

ただ、この日の展開は、スズパレードにとっては願ってもないものだった。人気薄のシンブラウンが逃げを打ち、この馬に引っ張られて1番人気のニシノライデンと2番人気のニッポーテイオーが、カカリ気味に続いた。やがて彼らの位置関係は、ニシノライデンが前…

『最後のチャンス』

常にシンボリルドルフ、ビゼンニシキ、サクラユタカオーといった一線級の名馬たちと闘い続けてきたスズパレードも、気が付くともう7歳になっていた。悲願のGl制覇を実現するために、残された機会と時間は、そう多く残されていない。 だが、富田師が春の大目…

『皇帝のいない日々』

天皇賞・秋(Gl)ではまったく走る気を見せなかったスズパレードだが、この日の彼は、ひとつの出会いを果たしている。それは、この日初めて彼の手綱を取った蛯沢誠治騎手との出会いである。 蛯沢騎手は、かつてはビゼンニシキの主戦騎手としてスズパレードと戦…

『コンプレックス』

だが、ようやく本格化し始めたスズパレードを待っていたのは、思わぬ運命だった。次走に予定していた中山記念(Gll)を直前にして、スズパレードは脚部不安を発症してしまったのである。そのため、シンボリルドルフとの天皇賞・春(Gl)での再戦も不可能となって…

『我が道を往く』

スズパレードは、中央開催の中長距離戦線が菊花賞、ジャパンC(Gl)、有馬記念(Gl)という華やかな戦いに沸いている頃、陽の当たる中央開催に背を向け、美浦を離れて再び福島へと向かった。本来ならば自分も出走するはずだった菊花賞・・・その1週前に行われる…

『絶対皇帝、君臨す』

たんぱ賞で重賞ウィナーの仲間入りを果たしたスズパレードは、秋緒戦に選んだセントライト記念(Glll)で、シンボリルドルフに4度目の対決を挑むことになった。 シンボリルドルフの秋のローテーションについては、当時あまりの強さに「もはや三冠を獲る必要す…

『福島へ』

春のクラシックの有力馬たちは、日本ダービーの後に放牧に出されるのが常だが、スズパレードの場合はもう1回叩いた後に放牧することになった。秋の選択肢を広げるためには、本賞金をもっと加算しておく必要があったためである。 スズパレードの次走は、ラジ…

『皇帝の陰』

皐月賞で4着に入ったことで日本ダービーへの出走を果たしたスズパレードだったが、それまでのレースでシンボリルドルフとは完全に勝負づけがついた形の彼に対し、ダービー制覇の期待は盛り上がらなかった。4番人気とはいえ、彼の単勝オッズは3000円近かった…

『非運の名馬たち』

スズパレードの次走・弥生賞には、彼だけでなく、この年のクラシック戦線で有力視されていた他の強豪たちも出走してきており、その中には共同通信杯4歳S(Glll)でスズパレードを破って無傷の4連勝を果たしたビゼンニシキの姿もあった。 しかし、ビゼンニシキ…

『無限の明日』

スズパレードは共同通信杯4歳Sに出走したものの、ここでのファンの注目は彼ではなく、同じく3連勝中で、しかもこちらは無傷の連勝中だったビゼンニシキに集中した。1番人気ビゼンニシキの単勝は140円で、2番人気スズパレードの440円を大きく引き離していた。…

『思ったより走るぞ』

スズパレードは、こうして生産界の歴史から姿を消したソルティンゴが遺した忘れ形見たちの1頭であり、その意味でわずかに注目を集める程度の馬だった。生まれてきたスズパレード自身は、小柄な体格であまり見栄えがせず、地味な存在だった。 ただ、スズパレ…

『悲劇の父』

スズパレードの父ソルティンゴは、社台ファームの総帥・吉田善哉氏の所有馬として伊仏で走り、15戦5勝、イタリア大賞(伊Gl)、ミラノ大賞(伊Gl)を勝ち、伊ダービー(伊Gl)2着という2400mの大レースで実績を残した。それらの実績を買われたソルティンゴは、種牡…

『目立たない出生』

スズパレードの生まれ故郷は、当時門別に存在していた柏台牧場という生産牧場である。柏台牧場は、後にオグリキャップの宿敵・スーパークリークを生産したことで有名になるが、当時はまだGl馬を輩出していなかった。 スズパレードの母スズボタンは、競走馬と…

『皇帝世代』

サラブレッドの強弱を語る時に欠かせない要素のひとつとして、そのサラブレッドが属する世代の強弱が挙げられる。日本の競馬体系は、まず世代限定戦から出発し、異世代との対決はクラシック戦線で同世代との決着をつけた後になる。そのため、同世代での対決…

■第016話―皇帝のいない夏「スズパレード列伝」

1981年3月21日生。牡。鹿毛。柏台牧場(門別)産。 父ソルティンゴ、母スズボタン(母父ロムルス)。富田六郎厩舎(栗東)。 通算成績は、25戦12勝(3-8歳時)。主な勝ち鞍は、宝塚記念(Gl)、中山記念(Gll)、オールカマー(Glll)、ダービー卿CT(Glll)…