『我が道を往く』

 スズパレードは、中央開催の中長距離戦線が菊花賞ジャパンC(Gl)、有馬記念(Gl)という華やかな戦いに沸いている頃、陽の当たる中央開催に背を向け、美浦を離れて再び福島へと向かった。本来ならば自分も出走するはずだった菊花賞・・・その1週前に行われる福島民友C(OP)へ出走するためだった。

 しかし、スズパレード陣営の選択は、結果として吉と出た。シンボリルドルフの呪縛から逃れたスズパレードは福島の地で再生し、福島民友C、そして続く福島記念(Glll)を連勝したのである。弱い馬を相手に適距離で走ることができる裏開催でなければ、スズパレードの大成はなかったかもしれない。彼は、いよいよ本格化の兆しを見せ始めた。

 5歳になって中央開催へ帰ってきたスズパレードは、まず手始めに中山金杯(Glll)を楽勝し、単なる「福島巧者」ではないことを世に示した。レース前に

「4歳の後半を福島で使ってきたのは、この馬の力に合ったレースを選んだため。その間に、この馬は見違えるほど成長しました。この金杯に勝てば、本当の意味でのA級馬と言えるでしょう」

と意気込みを語っていた富田師だったが、福島民友C以来の3連勝、しかも着差も1馬身半、2馬身、3馬身と次第に広がっていくさまは、彼の言葉と自信を裏付けていた。もはや、かつての大舞台に弱いスズパレードではなかった。