『―ただ、消え去るのみ』

 オグリキャップは、今や説明不要の期待のアイドルホースにして超一流馬である。公営笠松競馬で12戦10勝の成績を残して中央入りしたオグリキャップは、中央競馬でも出るレース出るレースで連戦に次ぐ連勝を重ねた。競馬の華というべきクラシックレースには、クラシック登録がなかったことから出走できなかったものの、裏街道で対戦する4歳馬たちでは相手にならず、古馬との混合戦に出走しても、やはり次々勝ちを重ねるという快進撃は、この時も続いていた。オグリキャップこそは、シンボリルドルフ以来久々に現れた競馬界の歴史的名馬だった。当時の競馬界の話題といえば、この怪物オグリキャップと、当時の最強古馬タマモクロスという2頭の芦毛のどちらが強いのか、という一点に絞られていた。

 脚部への配慮から天皇賞・秋(Gl)を回避し、ジャパンC(Gl)、有馬記念(Gl)というローテーションを採ったスズパレードだったが、オグリキャップタマモクロスの一騎打ちにはまったく加わることもなく、見せ場も作れないまま大敗してしまった。

 そして、オグリキャップタマモクロスとの一騎打ちを制して天皇賞・秋ジャパンCの借りを返したことに沸いた有馬記念を最後に、スズパレードは予定通りに引退することとなり、シンボリルドルフ世代の最後の生き残りは、ひっそりと競馬場を去っていった。