『大輪の華』
すると、蛯沢騎手の切実な思いが通じたのか、その後の展開は、スズパレードにとって非常に都合のいいものとなった。前を行くニシノライデンをかわしにかかったニッポーテイオーは、ニシノライデンのすぐ外につけたのである。蛯沢騎手は、とっさにスズパレードをニッポーテイオーのさらに外へと持ち出した。ニッポーテイオーのさらに外から仕掛ければ、ニシノライデンがどうヨレたとしても、スズパレードは不利を受けようがない。
ニシノライデンの斜行をおそれる必要がなくなったスズパレードの末脚は、ついに炸裂した。最初からカカリ気味に飛ばしてきたニッポーテイオー、ニシノライデンは、互いに競り合うのが精一杯だった。大外から飛び込んでくるもう1頭・・・彼らの目の内には入っていなかったスズパレードまで相手にする余力は、もはや残っていなかった。
ニッポーテイオーとニシノライデンをまとめてかわしたスズパレードは、その差を2馬身に拡げてゴールに飛び込んだ。
「勝つ時というのは、本当に楽に勝てるものなんですね」
とは、蛯沢騎手の勝利騎手としてのコメントだった。だが、ここに至るまでの関係者の道のりまで「楽だった」わけではない。シンボリルドルフ世代の数少ない生き残りとなった7歳の老雄は、ここに悲願のGl制覇という大輪の華を咲かせたのである。