『最後のチャンス』

 常にシンボリルドルフビゼンニシキサクラユタカオーといった一線級の名馬たちと闘い続けてきたスズパレードも、気が付くともう7歳になっていた。悲願のGl制覇を実現するために、残された機会と時間は、そう多く残されていない。

 だが、富田師が春の大目標としていた安田記念(Gl)では、フレッシュボイスの鬼脚の前に見せ場もなく7着と完敗し、Gl制覇の夢はまたも遠ざかっていった。

 それでも夢をあきらめることができないスズパレードは、本来安田記念後に休養、という予定をたてていたものの、それを覆して宝塚記念(Gl)へと駒を進めることにした。スズパレードのGl挑戦は、通算はこれで6度目だった。

 この年の宝塚記念は、例年に比べると主役不在の混戦模様だった。春の天皇賞馬・ミホシンザン脚部不安のため出走せず(その後、そのまま引退)、本命と見られたのは天皇賞・春(Gl)で2着入線ながら斜行のため失格となったニシノライデンだった。ニシノライデンはGllこそ3勝していたものの、Gl勝ちの経験はない。また対抗視されたニッポーテイオーも、後に短中距離Glを3勝するとはいえ、当時はまだGl未勝利である。このレースに出走したGl馬は、安田記念馬のフレッシュボイスと、前年の天皇賞・春勝ち馬ながら、近走は不振のクシロキングだけだった。

 この日のスズパレードは3番人気だった。名中距離馬と呼ばれてもおかしくない戦績は持っていたものの、やはり主役には一息足りない超二流馬、というのが当時のスズパレードの評価だった。