『無限の明日』

 スズパレード共同通信杯4歳Sに出走したものの、ここでのファンの注目は彼ではなく、同じく3連勝中で、しかもこちらは無傷の連勝中だったビゼンニシキに集中した。1番人気ビゼンニシキ単勝は140円で、2番人気スズパレードの440円を大きく引き離していた。

 そして、スズパレードはここで「世代の一流馬」と呼ばれる強豪の実力を知ることになった。ビゼンニシキを脅かすこともできないまま4着に敗れたことで、彼の連勝は終わりを告げた。クラシック戦線が近づくにつれて、無数の主役候補たちは次第に絞られ、真の主役と脇役との差がはっきりし始める。スズパレードもまた、この敗戦によって脇役へと分類されつつあった。

 もっとも、だからといってこの時点でクラシックを諦めるという選択肢は、スズパレード陣営には存在しなかった。もともと中距離血統のスズパレードが春のクラシックに出ずして、どんなレースに出ようというのか。

 スズパレードは、共同通信杯4歳Sの後は弥生賞(Glll)、皐月賞(Gl)、そして日本ダービー(Gl)という春のクラシックの王道を歩むことになった。だが、彼の王道での戦いは、彼の最大の不運・・・1984年クラシック世代に生まれたことの不幸を引き立たせるだけになるということを、彼を取り巻く人々はいまだ知らない。