1999-09-18から1日間の記事一覧

『脇役なるが故に・・・』

引退して種牡馬となったスズカコバンは、Gl勝ちがあるとはいえ、競走成績が今ひとつインパクトを欠くものだったため、種牡馬としては苦戦を強いられるかに見えた。しかし、スズカコバンは活躍馬を次々と出すことによって、自らの活路を開いていった。 当初、…

『最後の戦い』

宝塚記念(Gl)制覇の後のスズカコバンは、故障に見舞われたこともあり、なかなか実力を発揮できない日々が続いた。宝塚記念を勝ったことで「西の総大将」といわれるようになった彼だったが、実際には宝塚記念を勝つ前と同じように、惜敗続きの超二流馬に戻っ…

『我らが勝利者たち』

先頭に立ったものの、限界に達しようとしていたスズカコバンに対し、もの凄い脚で後方の馬群を抜け出し、襲いかかってくる馬がいた。レース中ただ1頭、スズカコバンのさらに後ろでスタミナを温存し、仕掛けも最後の最後まで遅らせて末脚勝負に賭けていた後門…

『栄光のゴールを目指して』

そんな膠着状態に入り込んだレースを最初に動かしたのは、1番人気のステートジャガーだった。産経大阪杯ではマクり気味に進出し、そのままゴールまで押し切ったステートジャガーは、この日も大阪杯の再現を狙って第3コーナー付近から一気に進出を開始した。 …

『膠着する戦況』

この日のレースは、ウィンザーノットの単騎逃げから始まった。後に函館記念(Glll)連覇などの実績をひっさげて種牡馬入りしたこの馬自身、当時の競馬界では常に「未完の大器」として語られていた。 しかし、ウィンザーノットはこの日が休養明け9ヶ月振りの実…

『千載一遇の時』

天皇賞・春(Gl)3着の後、スズカコバンは宝塚記念(Gl)へ向かうことになった。もっとも、当時の中長距離戦線は、既にシンボリルドルフ一色となっていた。天皇賞・春でミスターシービーとの決着を完全につけたシンボリルドルフにもはや「対等のライバル」はなく…

『激しき時代の中で』

6歳になったスズカコバンに対し、時代はさらなる苦難を強いた。勝つ、ただそれだけのことがこれほどに難しいことだとは、思いもしなかったことだろう。だが、6歳になった彼が歩む中長距離戦線には、1歳年下の三冠馬であり、「絶対皇帝」と称されたシンボリル…

『勝つことの難しさ』

しかし、その後のスズカコバンは、様々な悲運にも見舞われて、順調さを欠いてしまった。菊花賞を見据えて勇躍向かった京都新聞杯(重賞)で、スズカコバンはレース中に眼に外傷を負い、実力を発揮しきれないまま、カツラギエースの5着に敗退してしまった。おま…

『一線級への飛躍』

日本ダービーで一線級との力の差を見せつけられたスズカコバンは、その敗北を機に、飯田騎手から田島良保騎手へと乗り替わることになった。スズカコバンは追ってもなかなか反応しないズブいところがあったため、腕っぷしが強く、直線でも馬を強く追うことが…

『若き日の挫折』

スズカコバンが入厩することになったのは、栗東の小林稔厩舎だった。小林師は1999年に調教師を引退したが、その時までに通算899勝という実績を残した。1996年には、フサイチコンコルドで日本ダービーを勝っている。 ただ、「西高東低」が当然のようになって…

『悲運を乗り越えて』

ところが、スズカコバンはその欠点ゆえに大きな危機を迎えることになってしまった。当歳の秋に野性の命じるままに遊んでいたスズカコバンは、勢い余って電柱を支える鋼線にぶつかった際、胸前に深い傷を負ってしまったのである。 この時の傷は、筋肉の断裂を…

『マルゼンスキーの代表産駒』

父マルゼンスキー、母サリュウコバンという血統とともに生を受けたスズカコバンは、生まれてすぐにその素質を認められるようになった。彼を見に来たある調教師からは「マルゼンスキーの代表産駒になれる器です」と太鼓判を押してもらったほどで、馬主もすぐ…

『素晴らしき牝系』

スズカコバンは、北海道の平取・稲原牧場で生まれた。稲原牧場といえば、近年ではサイレンススズカの生まれ故郷として有名になったものの、当時はそれほど有名な牧場ではなかった。・・・というより、スズカコバンは平取で生まれた初めてのGl馬である。 稲原…

『西の名脇役』

いつの時代、どこの競馬にも「名馬」と呼ばれるサラブレッドがいれば、「脇役」と呼ばれるサラブレッドがいる。「名馬」がすべてのファンから強さを認められ、畏敬を捧げられる存在だとするならば、「脇役」はそうした存在とはまったく異なる。「名馬」と異…

■第017話―脇役なるが故の愉悦「スズカコバン列伝」

1980年3月16日生。牡。黒鹿毛。稲原牧場(平取)産。 父マルゼンスキー、母サリュウコバン(母父ネヴァービート)。小林稔厩舎(栗東)。 通算成績は、34戦7勝(旧3-7歳時)。主な勝ち鞍は、宝塚記念(Gl)、京都大賞典(Gll)2回、神戸新聞杯(重賞)。 ―そ…