『栄光のゴールを目指して』

 そんな膠着状態に入り込んだレースを最初に動かしたのは、1番人気のステートジャガーだった。産経大阪杯ではマクり気味に進出し、そのままゴールまで押し切ったステートジャガーは、この日も大阪杯の再現を狙って第3コーナー付近から一気に進出を開始した。

 直線に入ってすぐにウィンザーノットをとらえたステートジャガーは、そのまま先頭を奪うかと思われた。・・・しかし、意外なのはそこからだった。単騎逃げでレースを思う通りに進めたウィンザーノットは、他の騎手たちの当初の読みに反し、なかなか崩れない。

 そんな中で勝機が見えたのは、ステートジャガーについて上がっていったスズカコバンだった。スローな流れの中でさらに後方で我慢してきたスズカコバンには、まだ余力が十分に残っていた。しかも、それでいて先頭と後方の差があま余りない、縦に短い展開である。瞬発力勝負となるこの日の展開は、どちらかというと差しや追い込みの競馬を得意とするスズカコバンにとって望むところだった。

 スズカコバンは、逃げ粘るウィンザーノット、今ひとつ伸びを欠くステートジャガーをまとめてかわし、先頭に立った。Gl(級)のレースの挑戦は、この日が6度目である。それまで負け続けた大舞台での、夢にまで見た栄光のゴールは、すぐそこにある。―だが、すぐそこが遠い。それまで大外を回ってきたスズカコバンは、距離としてはかなり余計な分まで走っており、さすがにその脚は限界に近づいていた。