1999-05-22から1日間の記事一覧

『今も流れる時代とともに』

しかし、サクラスターオー、マティリアル、ゴールドシチーたちの時が止まった後も、ダービー馬メリーナイスの時は流れ続けて現在に至っている。 メリーナイスは、種牡馬としてマイネルリマーク(共同通信杯)、イイデライナー(京都4歳特別)などの重賞馬を輩出…

『戦いに生きて ―ゴールドシチー』

四白流星尾花栗毛、メリーナイス以上に目立つ風貌でファンも多かった西の3歳王者ゴールドシチーは、クラシック三冠でもそれぞれ2着、4着、2着と好走を続けた。しかし、そんな彼もついに勝利を得るまでには至らず、古馬になってからはGll3着が2回あるものの、…

『さらば戦友よ ―マティリアル』

かつてメリーナイス、サクラスターオーのライバルとしてクラシック戦線の主役の1頭に数えられたマティリアルだったが、古馬になってからは、かつての面影は完全に過去のものとなっていた。皐月賞、ダービーで1番人気に支持された大器は、スプリングS優勝の後…

『ターフに別れを告げて』

結局、この日の函館記念は、メリーナイスの生涯最後のレースとなった。函館記念後のメリーナイスは、天皇賞・秋(Gl)に向けて調整がなされていたものの、調教中に骨折してしまい、引退を余儀なくされたのである。 メリーナイスには、もともと脚部不安がつきま…

『ダービー馬の役割』

函館記念のレースは、最初の1000mが57秒7というハイラップを刻んだ。前があまりに速くなると、逃げ馬や先行馬が総崩れになり、差し馬や追い込み馬が有利になる、というのが一般的である。後方待機を決め込んだメリーナイスにとっては、まさに望むところの展…

『新しき力の前に』

メリーナイスは天皇賞・春(Gl)に惨敗した後、心身ともにリフレッシュするため、笹針を施した上で休養に入ることになった。 メリーナイスが復帰したのは、真夏の函館記念(Glll)でのことだった。函館記念は、本来のレースの格からいえば一流馬の出るレースとは…

『主役交代』

同じクラシック戦線を戦い、彼らの世代の雄と呼ばれたサクラスターオーが去った後、彼らの世代の新しいエースの役割への期待は、メリーナイスへと集まることになった。メリーナイスはサクラスターオーとの直接対決に勝ったことがないとはいえ、朝日杯とダー…

『流れ星、消えた』

レースはやがて、勝負どころの2周目、第4コーナーへと入っていった。おのおのの馬たちが少しでも有利な位置取りを占めようと、騎手たちの激しい駆け引きが繰り広げられる。・・・そして、サクラスターオーも内を衝こうと動いたその時、悲劇は起こった。サク…

『哀しい予感』

しかし、誇りを賭けての大一番に臨んだはずのメリーナイスが見せたのは、強い馬としてではなく、イロモノとしての大失敗だった。スタートで少し立ち遅れたメリーナイスだが、よく見ると鞍上には誰もいない。・・・メリーナイスは、スタートと同時に根本騎手…

『もがく者』

悪夢のような菊花賞の大敗は、メリーナイスのダービー馬としての価値を大きく傷つける形となった。メリーナイスが菊花賞の悪夢を振り払うためには、サクラスターオーに直接対決で勝つしかなかった。 橋本調教師は、メリーナイスの次走を有馬記念(Gl)に定めた…

『幻の三冠馬』

だが、一流馬への脚がかりとなるはずだったこの日、メリーナイスは無残にも重圧に押し潰されてしまった。好位につけて直線での抜け出しを図るはずだったメリーナイスは、淀の下り坂で一気に進出して第4コーナーで先頭にたったものの、そこからまったく手ごた…

『二冠への道』

閑話休題。ダービー馬メリーナイスは、ダービー後も充実の一途をたどっているかのようにみえた。メリーナイス陣営が秋の初戦に選んだセントライト記念(Gll)でも、横綱相撲で快勝し、菊花賞へ向けて死角はないことを世にアピールした。菊の前哨戦で、ダービー…

『優駿余話』

メリーナイスは日本ダービーを制覇して世代の頂点に立ち、映画の主人公にもなった。ちなみに、映画「優駿」には、根本騎手らも特別出演することになった。 もっとも、メリーナイスによるダービー制覇のシーンを映画のクライマックスで使うプランは、残念なが…

『四白流星、六馬身』

直線残り400mあたりに入ると、メリーナイスの豪脚はついに爆発した。府中名物の坂を一気に駆け上がると、もはや追走してくる馬は何もいなくなった。マティリアルは、ゴールドシチーは、他のライバルたちは、何にも来ない。大歓声の中で、後続との差だけが見…

『優駿』

そして、ダービーのゲートが開いた。メリーナイスは好スタートを切って、第1コーナーでは6番手ぐらいにつけることに成功した。「ダービー・ポジション」の神話が生きていたころから騎手を続けていた根本騎手は、あまり後方にいると届かないことが多い日本ダ…

『反攻の狼煙』

まさか映画の話で奮起した訳でもあるまいが、メリーナイスは皐月賞の後、みるみる体調が上向き、走る気もみせるようになった。日本ダービー(Gl)当日には、馬体は完璧に仕上がり、絶好の気配となった。 彼に騎乗した根本騎手は、最初から上機嫌だった。いざ本…

『素晴らしき特典』

ただ、メリーナイスの主戦騎手である根本騎手は、皐月賞の大敗後も、ダービーに向けてまったく悲観していなかった。彼は、皐月賞の敗因を、自分がマティリアルのマークにこだわりすぎた結果、脚を余してしまったからだと知っていた。7着に敗れたとはいえ、追…

『戻らぬ評判』

だが、クラシックを目の前にして、主役の座が空白であることを許しておくほど、競馬ファンは寛容ではなかった。彼らの目は、同じレースの第3コーナー辺りで、ブービーの馬からもさらに5馬身ほど遅れたシンガリにいたにもかかわらず、直線だけで全馬を差し切…

『春の蹉跌』

こうしてサクラロータリーなき後の朝日杯をメリーナイスが制した1987年クラシック世代だったが、この世代における有力馬の故障は、サクラロータリーだけにとどまらなかった。関西でデイリー杯3歳Sをはじめとする3戦3勝の戦績を残していたダイナサンキューも…

『幻の朝日杯馬』

こうしてGl馬となったメリーナイスだが、その一方で、この勝利は「サクラロータリーの故障で転がり込んだ」とみられることも避けられなかった。「サクラロータリーが出走していれば、結果はどうなっていたか・・・」 「サクラロータリーこそ実力ナンバーワン…

『世代に先駆けて』

朝日杯3歳S(Gl)でのメリーナイスは、ホクトヘリオスに続く2番人気に支持された。メリーナイスとホクトヘリオスといえば新馬戦で一度対決しており、この時はメリーナイスが勝利を収めている。しかし、メリーナイスに敗れたホクトヘリオスは、その後折り返しの…

『戦いの序曲』

当初、メリーナイスの最大の特徴は、四白流星の栗毛という外見であると思われていた。競馬歴の浅いファンでもひとめで区別できるこの美しい馬は、血統的には決して期待を集める存在とは言い難かった。 しかし、このグッドルッキングホースが非凡なのは、外見…

『誕生』

メリーナイスの生まれ故郷は、静内の前田徹牧場である。当時の前田徹牧場は稲作と馬産の兼業で、繁殖牝馬はアラブとサラブレッドを合わせて5頭程度しかいなかった。中央競馬には生産馬を送り込むことすら滅多にない地味で目立たない個人牧場で、1984年3月22…

『悲劇の世代に生まれて』

サラブレッドを語る際によく使われるのが、世代による区別である。競馬では、完成した古馬と未完成の若駒を最初から一緒に走らせるとあまりに不平等なことから、日本の中央競馬では4歳(現表記3歳)秋までの間は同世代のみでその強弱を決し、その後に上の世代…

■第014話―戦友の死を乗り越えて「メリーナイス列伝」

1984年3月22日生。牡。栗毛。前田徹牧場(静内)産。 父コリムスキー、母ツキメリー(母父シャトーゲイ)。橋本輝雄厩舎(美浦)。 通算成績は、14戦5勝(旧3-5歳時)。主な勝ち鞍は、日本ダービー(Gl)、朝日杯3歳S(Gl)、セントライト記念(Gll)。 ―悲…