『世代に先駆けて』
朝日杯3歳S(Gl)でのメリーナイスは、ホクトヘリオスに続く2番人気に支持された。メリーナイスとホクトヘリオスといえば新馬戦で一度対決しており、この時はメリーナイスが勝利を収めている。しかし、メリーナイスに敗れたホクトヘリオスは、その後折り返しの新馬戦、函館3歳S、京成杯3歳Sを3連勝し、一度は遅れをとった評価を取り戻していた。
ただ、このレースの馬柱には、もし出走できていれば確実に1番人気となったであろうある馬の名前が欠けていた。それは、りんどう賞でメリーナイスに勝ったサクラロータリーである。
サクラロータリーは、りんどう賞の後に府中3歳Sに出走し、名門シンボリ牧場が送り込んだ大器マティリアルを破って、無傷の3連勝をレコードで飾った。そして
「今年の朝日杯はこの馬で決まった」
とも噂されたサクラロータリーだったが、その後骨折によって戦線を離脱し、朝日杯に駒を進めることはできなかったのである。
本命馬が消えた朝日杯は、メリーナイスとホクトヘリオスの一騎打ちムードとならざるを得なかった。メリーナイスの鞍上・根本康広騎手は、どうすればいかにホクトヘリオスに先着するかを考えた。そして、ホクトヘリオスが追い込み一手の不器用な馬であることを見越して、道中はとにかく中団、ホクトヘリオスより前でレースをする作戦を採ることにした。ホクトヘリオスが後ろにいる間に前方へと進出し、直線で早めに先頭に立つことで、直線に入る前にホクトヘリオスに可能な限り差をつけておき、瞬発力の差を補うためだった。
根本騎手の作戦は、見事に当たった。直線に入るとホクトヘリオスが猛然と追い込んできたものの、早目に進出していたメリーナイスには届かなかった。メリーナイスは、同世代の馬たちに先駆けて、見事Gl馬となったのである。