『泥棒に追い銭』
「素質はあるはずなんです。泥棒に追い銭になるかもしれませんが、もう少し様子を見させて下さい」
と言って現役続行を訴えたこともあって、ダイユウサクはかろうじて現役生活を続行させてもらえることになった。戦績を見れば、これは幸運としかいいようがない。
ダイユウサクの馬名の由来は、橋元氏がダイユウサクの母の父である「ダイコーター」と、孫の名前である「幸作」とを合成して「ダイコウサク」と名付けようとしたところ、馬名登録の時に「コ」を「ユ」と読み間違えられて「ダイユウサク」と登録されてしまった、というものである。
なるほど、何となくこんな由来の方がダイユウサクには相応しいような気もする。孫の名前を与えようとした橋元氏にとって、ダイユウサクもまた孫のようなものだったのだろう。しかも、名前を間違えられてしまっても仕方ないと思えるような、情けない孫である。橋元氏は、出来の悪い孫を見守るような心境で
「しょうがねえ奴だなあ」
とつぶやきながらも、ダイユウサクをあくまでも温かく見守り続けていた。