『馬の恩返し』

 こんな素晴らしい関係者に恵まれたダイユウサクは、勝たなければバチが当たるというものである。ダイユウサクは5歳になってからもろくでもない戦績が続いていたが、この年3戦目、通算5戦目となる新潟の400万下で、突然爆走した。12頭だての10番人気とまったく人気がなかったダイユウサクが、11番人気の2着馬を連れてきて、枠連31640円の万馬券を演出したのである。

 その後、マイルから2000m前後の距離でぼちぼち勝ち始めたダイユウサクは、夏には高松宮杯(Gll)に出走し、メジロアルダンの7着に敗れたとはいえ、重賞出走を果たした。また、900万円下の平場戦では、阪神芝1200mのレコードを記録した。

「やっぱりダイユウサクは走るんや!」

 ようやく能力が明らかになったことで、内藤師はすっかり上機嫌になり、ダイユウサクは残飯ではなく青草や人参、そしてなぜかクロレラまで貰えるようになっていた。彼は自らの力で、待遇改善を勝ち取った。

 5歳時のダイユウサクの戦績は15戦5勝で、賞金も7000万円強を稼いでいる。この時点で関係者への一応の恩返しは済ませた感があったが、ダイユウサクが本当に強くなるのは、まだ先のことだった。