『そして世界の頂点へ』

 レースはやはりメジロパーマーが引っ張る展開で、レガシーワールドは2番手につけた。それに続くのがマチカネタンホイザライスシャワーらで、前で競馬をするのがほとんど日本馬という形になったため、ここまでは普通の国内戦と変わりなかった。しかし、この日は後方待機策を採った馬たちの圧力が違っていた。外国馬が後方からぎりぎりと圧力をかけてきたのである。前評判では、その中でも特に北米の雄・コタシャーンスターオブコジーン、そして欧州の若きエース・ホワイトマズルが脅威とされていた。

 やや縦長だった馬群が、第3コーナーから第4コーナーにかけて一気に固まっていった。前半には普通かややスローのペースで流れたことから先行馬に有利な流れになったものの、それでも終盤には後方にいたはずの有力外国馬たちの中から何頭かが抜けてきた。やはり強い馬は強かったのである。

 逃げてレースを引っ張ったメジロパーマーは、力尽きてどんどん沈んでいった。しかし、残り200mでパーマーを一気にかわしたレガシーワールドの脚は止まらなかった。レガシーワールドはこれまで17戦走って、実は去勢前も含めて一度も掲示板を外していないほどの安定した実力を持った馬であり、せっかく有利な流れになった以上はそう無様な走りをするはずがなかった。一方、外からは、3頭が猛烈にレガシーワールドただ1頭をめがけて襲いかった。内からウイニングチケットプラティニ、そして単勝1番人気のコタシャーン。残り1ハロン、長い長い府中の直線、最後の攻防だった。

 ところが、ここで信じられないことが起こった。突然コタシャーンの鞍上ケント・デザーモ騎手が、馬を追うのを止めて一瞬腰を上げたのである。この瞬間、何が起こったのかが分かった人はそうはいなかった。デザーモ騎手は、残り1ハロンの標識をゴール板と間違えてしまったのである。勿論デザーモ騎手はすぐに自分のミスに気付き、再び追い出した。しか し、一瞬の判断ミスですら命取りとなる直線の攻防でこのロスは余りにも大きく、レガシーワールドからは1馬身と4分の1離された2着に入るのがやっとだった。

 優勝、レガシーワールドジャパンCを勝ったのは日本馬としては4頭目、国際Glに認定されてからは前年のトウカイテイオーに続く2頭目の勝利だった。2着にはコタシャーン、3着はダービー馬の意地を見せてウイニングチケットが入った。