『混戦の中、抜け出したのは・・・』
・・・しかし、この日のウイニングチケットは、激しい気性を自らコントロールできていなかった。返し馬の時から入れ込み気味だったウイニングチケットは、道中でも落ち着いてくれなかった。この日の位置どりも、中団につけたことまでは柴田騎手の作戦どおりだったが、道中で早めに進出を始めたのは、ウイニングチケットの激しい気性を柴田騎手の手綱をもってしても制御しきれなくなっただけだった。
道中で力を無駄に消費してしまったウイニングチケットは、直線に入ってからは思いのほか伸びなかった。それどころか、道中は好位でぴたりと折り合っていたビワハヤヒデに、逆に突き放されるほどの勢いの差があった。柴田騎手が懸命に追ったものの、ウイニングチケットはビワハヤヒデについていくことができなかった。
そんな中で、大外からはただ1頭、もの凄い脚を使って追い込んでくる馬がいた。その馬は、ウイニングチケットが弥生賞で粉砕したはずのナリタタイシンと武豊騎手だった。ナリタタイシンはこの日も弥生賞と同じように最後方での待機策をとり、末脚勝負に賭けていたのである。ナリタタイシンは、あっという間にあえぐウイニングチケットをかわすと、ひとあし早く先頭に立っていたビワハヤヒデに襲いかかった。
結局、ナリタタイシンがビワハヤヒデよりクビ差先んじたところがゴール板だった。その一方で、ウイニングチケットは1番人気を裏切り、屈辱的な5着入線に甘んじた。ガレオンが降着処分を受けたおかげで着順は4着に繰り上がったものの、そんなものは何の慰めにもならなかった。