『不完全燃焼の秋』

 菊花賞に敗れたウイニングチケットは、続いてジャパンC(国際Gl)への出走を表明した。ジャパンCはダービーと同じ東京2400mコースで行われるため、得意な舞台で復活を賭けたのである。

 この年のジャパンC(国際Gl)は米国からブリーダーズカップターフを制したコタシャーンが、欧州からは凱旋門賞アーバンシーがそれぞれやって来ていた。ブリーダーズカップ馬と凱旋門賞馬が同時に来日するのはジャパンC史上初めてのことである。他にもアーリントンミリオンなど米国の芝Glを3勝したパラダイスクリーク、前年にフランスダービーを勝ち、この年も凱旋門賞で2着に入ったエルナンドなど、外国招待馬10頭のすべてがGl勝ち経験を持っていたこともあり、「史上最強の外国招待馬」といわれていた。

 そんなメンバーの中で、ウイニングチケットは日本馬として人気最上位となる4番人気に支持された。世界を向こうに回して日本馬の大将格となったウイニングチケットの結果は、直線で良く伸びたものの、追撃届かず3着というものだった。2着に入った米国最強馬コタシャーンとまともに戦っての3着であり、その意味では価値あるものだったが、勝ち馬が同じ日本馬のレガシーワールドで、しかもレガシーワールドとの差は決定的だったことから、必ずしも満足のいく成績だったというわけではなかった。

 ウイニングチケットは、この後有馬記念(Gl)にも出走し、3番人気に支持された。しかし、京都新聞杯から菊花賞ジャパンCと使い込んできた疲労は、ここにきて表れた。1年ぶりのレースで奇跡の復活を遂げたトウカイテイオー、そのトウカイテイオーに最後まで食い下がって2着となったビワハヤヒデに比べ、ウイニングチケットはまったくいいところのないまま11着に惨敗してしまった。菊花賞(Gl)3着、ジャパンC(国際Gl)3着を含むとはいえ、4戦してGll1勝だけという4歳秋の成績は、ダービー馬ウイニングチケットにとって、満足すべきものとはいい難い結果だった。