『後悔先に立たず』
こうしてみていくと、ダイユウサクが中央競馬でデビューできたこと自体、奇跡のように思えてくる。もっとも、彼を預かることになっていた内藤師も、実際に成長した姿を見て
「早まった・・・」
と嘆かずにはいられなかった。入厩する頃のダイユウサクは、内藤師がかつて想像していた姿とはまったく違った方向に成長を遂げてしまっていた。自分が発掘してきたダイユウサクの成長を楽しみにしていた内藤師は、すっかり失望してしまった。
「俺の見込み違いだった」
と悔やんだ彼は、この馬を預かると決めてしまったことを、早くも後悔したという。だが、だからといっていまさら約束を一方的に破棄するわけにもいかない。
こんな感じだから、入厩したダイユウサクに、人々の期待が集まろうはずもない。しかも、ダイユウサクは体質が弱くて他の馬が食べている飼料が体質に合わなかった。そんな困ったダイユウサクに、内藤師は、入厩してから活躍し始めるまでのしばらくの間、厩舎の人々の残飯を食べさせていたという話である。