『夜が明ける直前に』

 産駒たちの活躍によって種牡馬生活にようやく光が射し始めたその瞬間、パーシャンボーイの運命は暗転した。

 初年度産駒が活躍し、特にパーシャンスポットが5歳になってからもGlllで2度2着に入ったことで、1994年のパーシャンボーイへの種付け希望は順調に集まった。しかし、その年の種付けシーズンが始まったばかりの4月2日、パーシャンボーイは種付けの最中に突然倒れ、そのまま逝ってしまったのである。死因は、心臓麻痺とされている。

 当時のパーシャンボーイは、まだ13歳であり、種牡馬としてはこれから脂が乗ってくる年齢だった。パーシャンボーイのこの年の種付けも、シーズンが始まった直後だったが、既に5頭を数えていた。せめてその年の春だけでも働けていれば、この世に生を受けるパーシャンボーイ産駒は、果たして何頭増えていただろうか。