ダイユウサク列伝改訂版あとがき 〜我、ダイユウサクに敗北す―

 前々からの懸案だったダイユウサク列伝の改訂が終わりました。新たに発掘したA級資料を反映させることによって大幅に内容が増補されています。また、サブタイトルも変わりました(旧「だから競馬は分からない」→新「世紀の一発屋」)。しかし、一仕事を終えた私は今、むしろダイユウサクへの敗北感でいっぱいです。

 ダイユウサク列伝はもともと初期の列伝の中でかなり浮いた存在でした。第一期の10頭のサブタイトルを並べてみて頂ければ察して頂けるのではないか、と思いますが、列伝馬については意図的に「短調」をイメージして選定しました。他では誰も語らないであろう馬達を語ろうという、のが当時の選定基準でした(最近はネタ切れのためか、メジャーな馬にも手を伸ばしていますが)。

 しかし、第一期の列伝馬のうち9頭まではこのコンセプトに忠実に書いていく事ができたにもかかわらず、ダイユウサクだけは満足できるものではありませんでした。どう書いても「短調」になり様がないのです。世間に再評価を迫ろうにも、どう見ても正当に評価し尽くされてしまっているのです。ぶっちゃけて言うと、ダイユウサクに対して一般に言われている「世紀の一発屋」という評価は、調べれば調べるほど正当なものとしか思えなくなっていったのです。

 今回の加筆によってもダイユウサク一発屋色は弱まるどころかますます強くなっています。私はついに新たなるダイユウサク像の創造を断念しました。サブタイトルの変更は、もはや「短調」の維持を断念して世間のダイユウサク評を追認した故です。

 私はダイユウサクに敗れました。彼の生き方は、私如きが新しい視点を発見できる様な生易しいものではなかったという事なのです。私は、今こそダイユウサクにこの言葉を捧げたいと思います。

 ―「きみこそが一発屋の中の一発屋だ」と。

 記:1999年9月18日
 文:「ぺ天使」@MilkyHorse.com