『ひそやかな期待』

 宝塚記念を前に調子を上げるパーシャンボーイは、直前の調教がまた凄かった。栗東に乗り込んでの追い切りで、芝のラスト3ハロン33秒0という驚異のタイムを叩き出したのである。高松師は、パーシャンボーイの仕上がりを見て、馬主の伊達氏に

宝塚記念は狙えるから、ぜひ競馬場に来てください」

と大見得を切り、鞍上には自厩舎の柴田政人騎手を確保した。柴田騎手も高松厩舎と切っても切れない縁で結ばれた絶対的な主戦騎手だったが、地方遠征が多かったパーシャンボーイには、それまで未勝利戦で2戦乗っただけだった。その彼を鞍上に据えたことからも、高松師の本気はうかがえる。

 鞍上に柴田騎手を確保したパーシャンボーイが調教で見せた強烈なデモンストレーションは、ファンの心と財布に強く支持を訴えかけた。そんなわけで、パーシャンボーイクシロキングスダホークに続く710円の3番人気に支持された。さらに、この日の阪神競馬場には、高松師に誘われた伊達氏の姿もあった。伊達氏いわく、阪神競馬場に来るのは1963年の桜花賞以来、実に23年ぶりだったという。