『気楽に乗れそう』

 ラッキーゲランは、5戦2勝で阪神3歳S(Gl)へと進んだ。しかし、この日人気を集めたのは、牝馬ながらデイリー杯を制した実績を買われたアイドルマリー、1戦1勝ながら、2億6500万円で落札された話題馬モガミショーウンを撃破しての新馬戦での勝ち方が注目を集めたセンリョウヤクシャあたりだった。夏に2勝したものの、その後の戦績はいまひとつだったラッキーゲランは、この時点ではあまり注目される存在ではなかった。

 ラッキーゲランは、この日は7頭だての少頭数でありながら、単勝1550円の5番人気にとどまった。ラッキーゲラン単勝馬券の売上金額は、1番人気アイドルマリーの単勝の10分の1以下だった。この認識は別にファンのみのものではなく、北海道での連勝の後、栗東へ帰ってきてからの2戦に続いて鞍上に迎えられた村本善之騎手も「気楽に乗れそう」などといっていたほどだった。

 池江師から

「行けるようなら(先頭に)行ってくれ」

という指示を受けていた村本騎手が気合をつけると、ラッキーゲランは楽に先頭に立ってレースを引っ張った。からんでくるかと思われたセンリョウヤクシャもあっさり引き下がったため、気持ちのよい単騎逃げとなった。