『狭まった道』

 毎日杯は、毎年皐月賞への出走の意思はあるものの、実績で劣るため出走が微妙な関西馬たちの集合するレースとして位置づけられることが多い。このレースについて「最終列車最終便」という言葉を聞いたことがある人は多いはずである。

 ヤエノムテキの目標も、このレースでとにかく2着以内に入って本賞金を加算し、皐月賞への出走を確実にすることにあった。重賞初挑戦が初めての芝コースというのは有利な材料とは言いがたかったものの、皐月賞への出走のためには、そんな贅沢を言っていられる身分ではない。

 皐月賞の切符を賭けた毎日杯に臨んだヤエノムテキだが、ここであっさりと4着に敗れてしまった。中団から漸進してきたものの、この日の彼は直線での伸びが今ひとつで、笠松から来た怪物・オグリキャップとファンドリデクターのマッチレースに置いていかれただけでなく、彼らの3馬身以上後ろでのインターアニマートとの競り合いにも敗れ去ったのである。この日2着にも入れなかったことで、ヤエノムテキ皐月賞への出走は、抽選に委ねられることになった。

 ちなみに、この日の勝ち馬となったオグリキャップは、クラシック登録がなかった。当時の規則では、クラシック登録がない馬は、クラシックレースに出走する道を完全に閉ざされていた。皐月賞を目指して無理なローテーションをとらざるを得なかったヤエノムテキより、毎日杯も含めて1戦1戦に全力を注ぐことができるという意味では有利な立場にあったオグリキャップだが、それにしても、クラシックに出走できない馬が、できる馬たちをいとも簡単に蹴散らした、というのは尋常ではない。この日の結果は、ヤエノムテキが後に皐月賞馬になったことにより、後々まで

「真の世代最強馬はオグリキャップ
オグリキャップがクラシックに出てさえいれば・・・」

と言われる根拠とされるようになった。