『レガシーワールド』

 レガシーワールドは、静内のへいはた牧場で生まれた。父はモガミ、母はドンナリディアという血統である。

 へいはた牧場は、幣旗力氏が(株)ホースタジマの社主を務めていた田島正雄氏に運営を任されて始まった牧場である。もともと土地、資金の準備は田島氏が行い、その運営を幣旗氏に任せるという、田島氏の個人牧場のような形で始まったへいはた牧場だったが、のちに(株)ホースタジマの所有馬として走ることになるレガシーワールドの誕生にも、田島氏が深く関係している。

 レガシーワールドの祖母にあたるダイゴハマイサミは現役時代に平地で3勝、障害で12勝をあげた馬だった。ところが、牝馬で障害を12勝もするようなこの馬は、男顔負けのがっしりとした大型馬だった。そこで、体型のすっきりとまとまった小型馬が好きな幣旗氏は、最初この馬を引き取るよう頼まれたとき、ていよく断ってしまった。ところがオーナーの田島氏はこの馬が大のお気に入りで、幣旗氏にぜひ引き取ってくれるよう懇請し、幣旗氏も

「恩人でもある田島さんがそこまで言うのなら」

と翻意して、ようやく引き受けた馬だった。

 そんなダイゴハマイサミが産んだドンナリディアは、中央競馬に入厩こそ果たしたものの、デビュー前のゲート練習中に隣の馬が暴れるのに驚いてゲート内で大暴れし、そのとき負った骨折のせいで、レースに出ることなく繁殖入りすることになった。そんなドンナリディアにモガミをつけて生まれた2番子が、レガシーワールドだった。