『夢を見るもの』

 レオダーバンは、伝説の名馬マルゼンスキーと、1勝馬シルティークとの間に生まれた子である。

 シルティーク自身は、中央競馬で1勝を挙げたに過ぎない二流馬だったものの、古くはビューチフルドリーマーまでたどり着く由緒正しい牝系、そして早田氏自身が導入に力を尽くしたダンサーズイメージの娘という血統に目をつけた早田氏によって、早田牧場新冠支場へと導入されることになった。

 ビューチフルドリーマーとは、戦前の馬産を下総御料牧場と二分した小岩井農場明治40年に輸入した牝馬である。また、この牝系がシルティークに至るまでの間には、ミハルオー、コダマといった小岩井農場出身の内国産種牡馬が代々交配されており、シルティークの母であるヤマトマサルの時点で既に「小岩井四大ファミリー」と呼ばれた血統のうち3本までを集約しており、一族からもオールカマーなど重賞を3つ勝ったハセシノブ新潟記念を勝ったハセマサルらが活躍していた。

 そんな由緒正しき血統に、早田氏が自分で輸入したダンサーズイメージが交配されているのだから、気にならないはずがない。在りし日の早田牧場新冠支場で生まれた生産馬たちの血統図を見ると、モミジほどではないにしろ、シルティークの名前を見かけることも多かった。シルティークは、牧場の基礎牝馬としていつも大切にされており、名種牡馬マルゼンスキーと交配されたことも、そんな彼女に対する期待の現われだった。