『暫定王者の悲哀』

 こうして菊花賞馬となったレオダーバンだったが、その実力に対する評価を歴代菊花賞馬たちと比べた場合、お世辞にも高いとはいえない状況だった。レオダーバンの勝ち時計は3分9秒5と1976年のグリーングラスの時以来の遅い時計だったし、何といっても彼の勝利は、二冠馬不在の中でのものだった。

「来年は、今は休んでいるトウカイテイオーに立ち直ってもらい、もう一度勝負をしたい」

 菊花賞のレースの後、岡部騎手はこう語った。この言葉は、レオダーバンが置かれた位置・・・しょせんは暫定王者でしかなかったことをはっきりと物語っている。

 トウカイテイオーが復帰しない限り、直接対決の希望がかなうことはない。レオダーバントウカイテイオーを凌ぐ評価を得るためには、トウカイテイオーに先駆けて上の世代の強豪たちと戦い、そして撃破するしかなかった。レオダーバンの次走は、有馬記念(Gl)に決まった。そんな彼らを待つ運命がどのようなものか、神ならぬ人々はまだ知る由もない。