『若き獅子の咆哮』

 計算し尽くされた岡部騎手の騎乗は、見事に結果となって表れた。超スローペースで馬群が団子状態となったまま第4コーナーまで押し寄せたこのレースは、完全な直線での上がり勝負となったのである。・・・スタミナに不安がある半面で、瞬発力を武器としていたレオダーバンにとって、これは望むところの展開だった。

 ライバルたちの多くは、予想を上回るスローペースに折り合いがつかず、持てる力を発揮しきれない状態となっていた。そんな中で、レオダーバンは、道中岡部騎手が懸命に折り合いをつけた甲斐あって、十分な末脚を発揮できる状態だった。直線に入って末脚を一気に爆発させたレオダーバンは、馬群を抜け出して先頭を捕らえると、そのまま一気に加速をつけてゴールへとなだれ込んでいった。大外からは、やはりイブキマイカグラが追い込んできたものの、レオダーバンはそんなイブキマイカグラに1馬身半の着差を保ったままでゴールした。若き獅子は、淀を舞台に勝利の雄叫びをあげたのである。

 レオダーバンは、菊花賞制覇を果たした。早田牧場新冠支場の生産馬にとっては初めてのクラシックウィナーである。レースの後、早田氏は

「(福島も入れると)75年目の快挙です」

といって笑った。・・・もっとも、馬産を本格的に開始したのが新冠進出以降であることを考えれば、14年目のことである。これは、本来ならば十分早いGl制覇といえる。また、牧場と人は苦労したにしても、馬についていうならば、この日レオダーバンが記録したキャリア7戦目での菊花賞制覇は、当時の最短記録だった。