『雨の日曜日』

 小雨降りしきる東京競馬場で、馬場状態は不良という悪コンディションの中、第104回天皇賞(Gl)のファンファーレが憂いを秘めて鳴り響き、ゲートが、そして戦いの幕が開けられた。

 すると、スタートとともに敢然と飛び出したのは、メジロマックイーンと武騎手だった。外枠が絶対不利とされる東京2000mコースで13番枠を引いたハンデを跳ね返そうとばかりに、彼らは先頭を行きながら、するすると内へ切り込んでいく。そんな現役最強馬に対し、挑戦者であるプレクラスニーも負けじと挑み、2頭は先頭をめぐって激しく対峙した。・・・そして第2コーナー過ぎで馬群を抜出し先頭を奪ったのは、プレクラスニーの方だった。

 プレクラスニーがレースを引っ張り、メジロマックイーン、ホワイトストーンが続く展開・・・それは、上位人気の3頭がすべて前で競い合うものだった。この日は上位人気3頭がすべて芦毛という珍しいおまけもついていた。後続は彼らについていくことができず、この展開のまま第4コーナーを回ると、いよいよ直線の攻防が始まるかと思われた。

 ・・・だが、直線で始まったのは、「攻防」などと呼べる代物ではなかった。渋った馬場を味方につけ、泥をはね、馬場を切り裂き、翔ぶが如く1頭の芦毛が、残る2頭の芦毛の横をすり抜けてあっという間に置き去りにし、雨の中へと消えていった。遠ざかるメジロマックイーンの背中を追うプレクラスニーだったが、その差はたちまち絶望的なものへと変わっていった。