『サラブレッドの幸せ』

 セン馬は種牡馬になることが出来ない。引退したレガシーワールドは、生まれ故郷のへいはた牧場に帰って、余生を過ごすことになった。最近、レガシーワールドは、相棒だったポニーのパピーちゃんが亡くなってしまったということで、寂しそうな様子を見せていたという。だが、今年(1999年)になってから新しい仲間のハニーちゃんが牧場へやって来たた め、再び元気を取り戻したとの事である。レガシーワールドは、今もハニーちゃんと一緒に放牧されながら、のんびりと故郷の草を食んでいるはずである(補注:どうもハニーちゃんとは仲が良くないらしいという話だが)。

 セン馬には何となくもの哀しい雰囲気が漂っているように思える。確かに、種牡馬になれない以上、ターフを去った何年か後に子供達が父を彷彿とさせる活躍を見せてくれるという夢はない。しかし、せっかく種牡馬になっても良い仔を出せず、いや、それ以前にろくに種付けの機会すら与えられないままに忘れられ、どこかへ消えていく内国産種牡馬も多いことを考えると、セン馬ながらも故郷に凱旋し、のんびりと暮らしているレガシーワールドは何と幸福なことか。

 レガシーワールドを見ていると、サラブレッドの幸せとは何なのだろうか、と考えてしまうのである。願わくば、レガシーワールドがいつまでも幸せでありますように…。[完]

記:1998年11月28日 補訂:1999年5月26日 2訂:2000年6月22日
文:「ぺ天使」@MilkyHorse.com
初出:http://www.retsuden.com/